緑の大地にしとしとと雨が降り注ぎ、  

ブーナー熱帯雨林の象徴ともいえる

うっそうとした木々を静かに濡らす。
   
その中を一匹の獣が歩いていた。




ゴリラだ。



ゴリラの名はマオ。



マオは孤独だった。



両親は事故で死んだか殺されたか、はたまたマオを捨てたのか定かではない。

物心ついたとき、すでにマオには家族といえるものがなかった。



ただ、野生の本能と豊かな自然、

そして恵まれた体躯に少しばかりの運が手助けして今日まで生きてきた。



生きるために生きる。



それがマオのすべてだった。



そんなある日、マオに転機が訪れた。



どこからか風で飛ばされたのだろうか、こんなところには珍しく一枚のチラシが落ちていた。



普段なら気にも留めないマオだったが、この日だけは違った。



チラシにはこう書かれてあった。





「ゴリラウホウホ撮影会」
日時・・・10/23(今日)23:00くらいから
場所・・・ブーナー熱帯雨林14鯖
条件・・・大成功のしぐさをもっていること
     一時的にでもゴリラであること

   

そしてチラシには写真が添えられていた。



そこには一匹のケツアゴサングラスピンクアフロゴリラが写っていた。



マオは自分以外のゴリラを見たのは初めてだった。



「会いたい」



会ってなにをしようなどとマオは考えない。



ただ会いたいという衝動に突き動かされ、マオは走った。



マオは字が読めない。



いつ、どこで、誰が、何をするなど文字からは何一つ読み取ることができない。



しかしマオは走った。



確信していた。



ケツアゴサングラスピンクアフロゴリラの写っている写真の後ろには、



見慣れたブーナーの木々が写っていたのだから。



茂みをかきわけ、小川を飛び越え、行く手を遮るモンスターを倒し、



マオは森の奥へ奥へと走っていった。



もうすぐ写真の場所だ。



声が聞こえる。



それも一匹や二匹じゃない。



「ウホウホ」「ゴッホゴッホ」「ウッホーウホ」



たくさんのゴリラの声が聞こえてきたのだ。











    
   
マオはためらいなく群れへと飛び込んだ。



群れの中心に、あの写真のゴリラがいた。



髪型こそアフロではなかったものの、

ピンクの髪

ケツアゴ

サングラスのゴリラなどそういるはずがない。






彼の名はぺけぴー。この群れのボスであり、

マオは知る由もないがゴリラ界のカリスマ的存在だった。



この日もぺけぴーの思いつきで

何をするかわからないイベントのために、

彼を慕ってたくさんのゴリラが集まってきた。



そんなよくわからないイベントに参加しているゴリラたちは、

突然のマオの参加にもかかわらず、

ドラミングを持ってマオを歓迎した。











   
   












   
ギャラリーもどんどん集まり、ゴリラたちのボルテージが上がっていく。    
    
    
   
   
テンションが高まり

衣服を脱ぎ捨て

感極まって紫のにわとりを頭にかぶったぺけぴーが叫ぶ。
   


「ウホー!ウホウホ!(二重丸を作ろう)」

「「「「ウホー!!!」」」」





ゴリラたちの一糸乱れぬゴリラ統率力!
   
みるみるうちに二重丸が出来上がっていく。




   
これがゴリラパワーか。まとわりつくような雨もやみ、いつしか太陽が顔をのぞかせていた。




もうマオは孤独ではなくなっていた。





彼の周りは





こんなにもたくさんのゴリラであふれているのだから。




楽しげなオスゴリラたちに誘われて、メスゴリラたちも集まってきた。




さあ


パーティーだ。








   
ゴリラたちの楽しげな声は



いつまでもいつまでも



ブーナーの空に響いていた。






   
いつまでも、いつまでも。

   




昔本で読んだことがある。



ゴリラはやさしい。



ゴリラの語源は

「毛深い女部族」を意味する

「ゴリライ」というギリシャ語が元になったと言われている。



1996年8月16日シカゴ・ブルックフィールド動物園

柵で遊んでいた3歳の男の子が

誤って5メートル下のゴリラ舎へ転落してしまう。



大型動物の群れの中へと落ちてしまうということが

どんな惨劇を意味するか想像に難くない。



しかし、群れの中の一匹の母ゴリラは

気を失っている男の子を抱き上げると

外へと通じる扉の前まで抱えて運び

飼育員の元へとその子を届けたのだ。






その母ゴリラの名は「ビンティ」






アストルティアに平和が戻る日は近い。





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